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私と蝶

不求甚解

ポーランド、ヴロツワフのインダストリアルフェスティバルに行ってきたよ

音楽

 

タイトル通りです。大学を休んで五日間ポーランドに行き、今日帰ってきました。ヘルシンキ乗り継ぎ。ワルシャワで一泊、ヴロツワフで二泊、夜行列車(コンパートメントのカウチ席なので、横にはなれない)で一泊、飛行機で一泊(移動で一日使っているので、五泊六日だが実質的な滞在は五日間)。Wroclaw Industrial Festival。インダストリアル、という音楽ジャンルを軸に、ヨーロッパ、アメリカあたりから様々なアーティストをポーランドヴロツワフに集めたフェス。主催者のMacijel(マイケル?) Frettは、自身ジョブカルマ jobkarmaというアーティストとして活動している。忘れないうちにどんなことがあったか、どんな人たちが良かったかを書いておきます。

昔は結構小規模だったみたいだけど、徐々にアーティストも増やしつつ、規模も大きくしつつで、今回は記念すべき15回目。去年は日本からノイズゴッドMerzbowが来たりとか、Test Deptが再結成してTest Dept:Reduxになったりとか、PRURIENTがいたりとか、結構豪華なメンツだったが、今回もそれに負けず劣らず。

 

まずヘッドライナーが、

ノイエ・ドイチェ・ヴェレの申し子的存在、生ける伝説DAF

インダストリアルというジャンルの創始者であるジェネシス・P・オリッジが、TG解散後に作り上げた、疑似新興宗教Temple of Psychic Youth御用達音楽グループPSYCHIC TV!

そのほかにも、UKノイズの大御所RAMLEH、ロシアアンダーグラウンドの重鎮REUTOFF、アメリカ、ウィスコンシン、ダークアンビエントからの刺客BURIAL HEX、ホワイトハウスのWilliam BenettのソロプロジェクトCUT HANDSなどなど、その手の人たちにとっては垂涎もののラインナップなんですが、正直なところ僕は全く詳しくありません。REUTOFFなんて特に予習もしなかったし、名前すら知らない人もいっぱいいたし、ホワイトハウスの人に関しては今名前を調べてる始末です。

こういう分野は、詳しい人はめちゃ詳しいし、詳しくない人は全然詳しくないというニッチなもので、ちょっと語るとすぐに「じゃあ君はレマレマ聞いてんのかい?」とか、「蔵六の奇病も聞かずにノイズを語るのかい?」みたいなアングラクラスタが湧いてくるのですが、もうそもそも死ぬほどアーカイブがある(MERZBOWなんて、全作品聴くの不可能でしょ)し、それなりの歴史もある中で、ちょっと数年前に興味を持ち始めたひよっこじゃ知識の幅に限界があるというものです。じゃあなんでポーランドまで行ったんだよと言われそうですが、それは単純に興味というか、現場を体験せんと分らんこともあるだろう、という…

 

all day ticketを買ったので、4日間ずっと(11/3~11/6)入れたんですが、疲れたり眠くなったり、四日目は行けなかったりして結局半分ぐらいしか見れてません。で、一日目の会場、White Stork Synagogueへ。たまに音楽関係のイベントもやってる、ユダヤの教会。

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 こんな感じ。

中はこんなん。

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パンフももらえます。

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おっかなびっくり入って、たどたどしい英語で名を名乗り、手首に来場者パスを巻いてもらう。paypalで事前にチケットの支払いを済ませ、メールで確認もしているので大丈夫なはずなんだが、本当に入れるかかなり不安だった。一安心。

 

日本でこういうイベントをやると客が男ばっかりなんだけど、ここではかなり女性、しかもアベックが多い。こんなエグい音楽をカップルで聴いていると思うと興奮します。あとみんな服がめちゃくちゃ黒い。僕は薄暗い緑のジャケットだったんだけど、それでもちょっと目立つ。しかも、全日通してアジア系の人が僕だけだったし、かなり緊張してきょろきょろしてたしでずっと変に目立ってた。いや俺だけってことあるかね??

で、一日目のメンツ。始まる前に開会式アリ。主催者のマイケルと、知らないおじさんと、マイケルの奥さん三人が順番子にしゃべるも、奥さん以外の二人がポーランド語でしゃべるのでほぼ訳が分からず。あと後ろのスクリーンにおもっきしwindows media playerの操作画面(もう一度再生する、のボタンとか)が出てて笑う。個人運営の感じがしたから、そういうトラブルはつきものだろうとは思っていたけど、スタッフの仕事がずっと雑だった。そもそもそういう仕事をまともにできない人たちがやってる音楽だし…

7JK

さっそく主催のマイケルと、ジーベン Sieben(ドイツ語で7の意)の二人組、7JK登場。マイケルがキーボードとマニピュレーション、ジーベンがバイオリンとボーカル。曲調は、よくあるダークアンビエント、ネオクラシック(パンフより。ネオクラシック??)。リズム・トラックはインダストリアルっぽい。もともとジーベンがネオアコとか出身で、マイケル(ジョブカルマ)がエレクトロニック出身だから、そこが合わさってるらしい。最初はバイオリンの音が鬱っぽく躁っぽくエロく響いてるし、ジーベンの動きも変だから楽しかったけど、ずっと似たような感じだからすぐ飽きたし、結局かなりクソだった。これくらい誰でもできるじゃん。僕以外の客も飽きてたらしく、終わった後かなりの人数飯食いに出ていった(途中入退場可)。空気もスベッてた。おい。評価3/10。僕もお腹がすいたので外出。

OWLS

有名な人らしい。最後の三分間だけ見た。これもエモ・ゴシック・テクノ・アンビエントみたいな。ジャンルに名前あんのかな?三人組。歌だけ聞いてると楽しいんだけど、真ん中の人がめちゃくちゃ自分に酔ってる歌い方しててキモくて引いた。左端の太ったおじさんはいい声出してた。評価5/10。

REUTOFF

ロシアのテクノ・ユニット。一日目のヤマ。二人とも完全にロシア人風のいでたち(一人は丸刈り髭面の釣り鐘型大男、もう一人は中肉中背なんだけどロシアの血が肩幅と体幹をやせさせることを許さない、といった印象の茶髪前髪おじさん)で、期待高まる。衣装、おそろいの黒いセーターだし。

で、これが良かった。ノイズ寄りのパワー・テクノ・アンビエント。激しくもなく、かといって心地よくもないだるいノイズがホールの中に爆音で響き渡る。震える重低音の上に、シンセのか細い音や青白い音が重なっていく。後ろのスクリーンでは、グロ系の記録映像(豚の屠殺とか)や、昔のホラー映画のエグいシーンとかが、黒や青を基調にした冷たい色使いでかわるがわる反復される。そしてテクノでミニマルなリズムフレーズ。ノイズ=不和とサウンド=調和のブレンドがむちゃくちゃ上手いし、とにかくノイズが良い。音がでかいし、メッセージが明確。ただ音を出してるだけじゃない、ノイズへのこだわりが、聞いてすぐにわかる。素晴らしい…と感動していたが、開始10分、15分経って、疲れと酒による強烈な眠気に襲われ、以降半分寝ながらの鑑賞となる。でもまあある意味それでいいのかも…と思えるくらい、心地よくだるく、心地よく不快な60分だった。最高。最後はシンセでちゃんとした和音で終わらせる、構成もよかった。ある意味ノイズをシンセの調和の演出として使っていて、そういう態度は純粋なノイズ派からは嫌がられるんだろうけど、そこはまあいいんじゃないでしょうか。評価9/10。

ライブと映像だとだいぶ印象ちがう。もっと激しいノイズだったイメージ。

 

一日目は眠かったのでこれで退散。二日目へ。帰り際に中古のCDとフェスのTシャツを買う。このTシャツを持ってるのは日本で俺だけということですね。ふふ。CDはSteve PittisのAmerican Psycho。適当に買ったけど割と当たりです。暴力温泉芸者とかみたいな、ミュージック・コンクレーテの要素があるノイズ。うーん不快!サイコ!たまらん!

二日目からは、教会の建物の中にある音楽バーみたいなところと、古い修道院の中で交互にライブ。音楽バーはまあクラブみたいなとこなのでそこまで広くない。修道院はかなり広い。両方とも二階がある。

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修道院。クソみたいな写真しかない… ケータイだし、うまくとれてません。

 二日目レポ。

INSTINCT PRIMAL

ちっちゃい方のステージからスタート。音響派?エクスペリメンタル・アンビエント的な?ポストインダストリアル的な?サウンド。ジャンル分けできない。鉄のペラペラの板にマイク付けて叩いたり、やすりみたいなシートに石を叩き付けたりして音を出す。まあいいんだけど、地味。よくある。評価5/10。

AGHATRIAS

何て読むの?なチェコの二人組。パンフレットのアー写が覆面被ってたので、覆面パワー・エレクトロニクスを期待したら、一人はもう覆面を外して出てくるし、開始3分でもう一人も覆面外しちゃって幻滅。音楽的にはパワエレ系、直径ノイズ・インダストリアル。結構いい瞬間、ツボな瞬間あったんだけど、中だるみした。ノイズ系は曲の切れ目がないから60分間ずっとやらなきゃいけなくて、そうすると客もやる方もかなり集中しなきゃなんだけど、そこまでの魅力はなかった。まあでもそこそこなので評価6/10。甘いかな?

BLACKWOOD

ネオフォーク、ノイズ・ドローン的なアプローチ。映像も薄暗いし、おじいさんだし、結構いいなとは思ったけど僕の好みではないのでいったん外出。評価6/10。

SIGILLUM S

イタリアのインダストリアルの大御所(らしい)。職人風のヒゲジジイ、オタク風のメガネ、あと一人は顔が思い出せない。かなりパワエレっぽい破壊的マシーン・ビート。まさにインダストリアルって感じ。映像も悪くない。途中でowlsの人らが参加して歌ったりしてた。こういうの、あんまりビート刻んでダンスになってもよくないし、かといって地味にミニマルすぎるのもよくないから難しいんだけど、割といいビートだった。ただ凡庸。個性を出すのは難しい。でも飽きずに聴けたし楽しかったので評価7/10。こんぐらいで充分でしょ。

CODEX EMPIRE

初めて聞いたけど思ってたより全然よかった。ダンスミュージックの基礎であるキック、これを破壊的なまでにデカくして他の要素を押しつぶし、テンポも遅く単純にして踊れなくして、変な音のシーケンスを重ねつつ軽いハイハットだけおまけ程度に入れとく、というかなり攻めたスタイル。だと思って聞いてたけど、youtubeとかで聞いてみるとそこまでキックデカくないので、会場のPAがアホだっただけかもしれない。でもとにかくそのミニマルで憂鬱な、ひねくれたサウンドはだいぶ好ましかったです。でももうかなり疲れてきてたので会談に座って寝ながら鑑賞。評価7/10。

DAF

真打登場!映像での予習の時は、「ああ、昔ニューウェーブ系でちやほやされてとがったことやってたけど、今は自分のことロックスターかなんかと勘違いしてダサくなっちゃったパターンのおっさんニューウェーバーか」とか思ってたけど全然違った。でもそういうパターンよくあるんだよな。。。その勘違いがニューウェーブを作ってたと思えばまあ納得いくのかもしれないけど。小川直人も、自分のこと福山雅治だと思っていっつもライブやってるって言ってたし。

だってこれが、

こうだもんなあ・・・水とかまいちゃってるし。おいおい…とか思ってましたよ、生で見るまでは。

DAFは78年デビュー。ドイツのパンク以降のバンドたち、つまりノイエ・ドイチェ・ヴェレ世代のスター。始めたばっかの頃は四人くらいいたらしいけど、80年代初めくらいからデルガド=ロペスとロベルト・ゲアルのデュオに。解散と再結成を繰り返し現在も活動中。KorgMS-20で作ったミニマルな不協和音のメロディがひたすら単調に繰り返される中、ゲアルのエモーショナルドラムとロペスのナルシスティックでハードゲイな声が乗っかり、ある種空回りともとれるような、もう精子でないのにずっとシコってますみたいな、そんな音楽、それがDAF(これ合ってる???)。歌詞は結構政治的だったり示唆的だったりするが、その辺とドイツの風土との関連については勉強中。EBMの開祖。ある意味パンクスよりパンク。

まずゲアルが舞台に上がり、DJミキサーにCDを入れて再生。これ以降、ロペスはボーカル、ゲアルはドラムしかやらず、誰もミキサーに触らないので、実質ドラムのあるカラオケである。そのあと黒いシャツ、黒いズボンのロペスが登場。眉を切りそろえ、五分刈りで、色男といった感じのロペスが客席に笑みを振りまく。水をまいたり、水を体にかけたりしながら、シャツの前を徐々に開けて胸毛をチラ見せしつつエロティックに歌うロペスに観客は完全に夢中。僕のいた前列のあたりでモッシュが起き、危険なので退避。日本のモッシュはやせた人が多いけど、外国のモッシュはムキムキの人が多いのでシャレにならん。

序盤からVerschwende deine jugend や Der Mussoliniで飛ばしに飛ばす。それでも中だるみしないのすごい。

ドラムの音が結構キレッキレで驚く。アッパーな曲はハイハットの裏打ちになるんだけど、音のキレに反してグルーヴをそこまでつけないのかっこいい。

あまりに盛り上がったので、フェスなのにアンコール。泥棒と王子、alles sind guteをやって終わり。いや半端なかった。辞め時を失ったニューウェーバーとして舐めてた自分を恥じた。ここまで迷いなく澄んだ瞳で、空振りテクノやられたら感服するほかない。確かに、冷静に考えたら、若い時ハードゲイやってたミュージシャンが、年とってナルシストダンディになるの納得な気がするし。スモークたかれてほぼ何も見えない会場で、スッカスカのテクノサウンドに、上半身裸になりながら酔いしれる観客も大変良かったです。評価10/10。三日目についてはまた明日か明後日に。

小川直人いいなあ。